___________________プロローグ__________________ |
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秋の気配が漂い始めた9月中旬、隊長のもとに一通のメールが届いた。
「寒い時期にカヌーをする場合、うはうは隊の皆さんはどんな服装をしているのですか?」という内容のものであった。
隊長は寒さが苦手なので、そういった時期にカヌーをしたことがない。
しかしこれも何かの縁だと思い、「隊長ならこうする」ということを色々考えてみた。そして、参考になればと思い返信した。
これを読んでいる読者諸君も、何か不明なことがありましたら、気軽に相談メールを送って下さい。
ツーリングカヌーのことなら、隊長の経験に基づいた返信ができるかと思いますので。(^;^)
ただし、間違っても”男女関係にまつわる悩み”などは送ってこないように。
そういうのはどちらかというと”みのさん”の方へお願いします。(笑)
先程のメールの主とは、その後何度かメールを打ち交わし、「今度一緒に川を下りましょう!」という話をして終わった。
そんな折り、のりさんから「加古川へ行ってみないか!」というメールが届いた。
加古川?名前は周知されている川だが、はたしてカヌーツーリングができるほどの川なのであろうか?
早速、情報を収集してみるものの、ツーリングレポートは極めて少なかった。。。
ということは、”ツーリングカヌーには適さない川”ということなのだろうか?
関西出身の上司に尋ねてみても、「水、汚いで。」の一語であった為
「まず、加古川へ行くか否か?」ということをノリさんに伝えた。
のりさん:
「せやなぁ〜。。。カヌーツーリングには向いてへんのかもしれんなぁ。。。
でも、オレが昔そのあたりをバイクでツーリングした時、△△の辺りはすごいええ雰囲気やったような記憶があんねん。
皆がカヌーに行くような川と比べると、確かに水は汚いかもしれん。
でもなぁ、ひと昔前に比べて下水の整備が格段に進んだ今日、かつて汚いと言われた川も徐々に良くなってきてるんやで。」
なるほど。。。 たしかに。。。
その川を漕ぎもしないうちから、偏見だけで「この川は汚い。ツーリング向きじゃない」とほざくのもなんだな。
そういうことを曰うのは実際にその川に舟を浮かべてみてからでも遅くはない。
その後で堂々と「○○川は汚かった」と言えばいいのだ。
第一、川の”キレイ”・”キタナイ”は個々の主観によるものだ。
水質ひとつとってみても、専門道具が無ければ分からないし、水質検査といっても川の上から下まで検査することもできない。
(国が行う水質調査も、一河川につき、数える程度の箇所でしか検査が行われていない)
ゆえに一般の人々は、その他の”景色”、”水の色”、”におい”などで判断している。
これらは、季節・天候・川の区間などにより様々に変化する為、その時々で”見た人の印象”も変わってくる。
例えば、全国一位の水質を誇る川があるとする。そしてその川の両岸は上流から下流まで終始コンクリ護岸で
終始騒がしい街中を流れていたとする。 この川に対する人々の評価は、まさに千差万別になるであろう。
そう考えると、川の”キレイ”・”キタナイ”や、カヌーツーリング向きか否かなどは、情報はあくまでひとつの情報として捕らえ
最終的な判断は自分自身ですべきだと、今更ながらに思った。。。
「この川でカヌーを浮かべるのなんて恥ずかしくない?」と思っていた自分が
”人の噂に流され、人の目ばかりを気にし、結局何もできない女学生”のようで情けなかった。
カヤッカーたるもの、流されてはいけないのだ! ”流れる”のだ!!
隊長:「のりさん、ありがとう。。。 よしっ!加古川へ行ってみようじゃないか!」
のりさん:「おーし!うはうは隊はマニアックな川にもどんどん繰り出すぞぉー!
あっ、でも、水面が見るからにウンコで埋め尽くされてるような川はやめておこうな。(爆)」
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__________________8日_________________ |
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小野橋の直下には低い段差(堰?)があった
この時は左岸側ギリギリを通ることができた
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そして我々は、ついに加古川へやってきた。
情報が少なかった為、前日に下見をしたのだが
昨日まで降った雨のせいで加古川は濁流と化していた。
その濁流に縮み上がった我々は
「リスクを最小限に押さえた区間にしようね」と
肩を寄せ合うのであった。。。
冒頭で話したメールの主(橋さん)も、家族でやってきた。
みんな揃って川を見つめ、
「加古川って普段からこんな色なの?こんなに水量あるの?」
と首をかしげながらのスタートとなりました。
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フジタカヌー”アルピナ430”を操る橋さんは
カヌーを始めたばかりだが、その魅力にとりつかれ
他にもドラゴンフライカヤックを所有している。
昨夜のキャンプでは
初対面の緊張を紛らわすかのようにビールを流し込んでいた。
↓ツーレポに載ってない詳細・写真有り↓
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加古川は、”佐治川”とも呼ばれる
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隊長:「うわぁ〜、なんか田舎風でエエ感じやんか〜!
加古川って、もっとゴミゴミしてんのかと思ってたー。」
のりさん:「そりゃあ、河口域はゴミゴミしてるけど
この辺まで来ればそんなこともないねん。
どんな川でも、案外そんなもんやで。。。」
氷上町・小野から山南町・前川までは
のんびりとした”日本の田舎”的風景が続いた。
篠山川との合流点に近づくと、釣り人がちらほらと現れ始めた。
”投げ釣り”や”ルアー釣り”をしているようだ。
親子で楽しんでいる姿は、じつに微笑ましい。
中には僕らが通りかかった際、丁度良く釣り上げる人もいて
その素朴な光景に心が和らぐ。
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毎年、全国で真っ先にアユ漁が解禁になる加古川も
この時には既に禁漁期に入っていたようで
このあとアユ釣り師に出会うことはなかった。。。
篠山川との合流点には”西部井堰”がある。
両岸から容易にポーテージできそうだ。
我々にとって、この日ひとつめの堰である。
「ひとつめ」ということは、、、
そう、この後もあるのです。
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加古川の情報を収集している時に
堰が多いということは把握できていた。
そのせいでカヌーのツーリングレポートが少ないのかもしれない。
我々はポーテージするため左岸側へ上陸し
ついでにお昼ごはんにした。
近くには”西部井堰河川公園”があり
ラジコン飛行機が飛んでいた。。。
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お昼寝の後、我々はまた
”加古川・堰越えカヌーツーリング”へと旅立った。
船町橋にさしかかる。
この橋の右岸にはエントリーしやすそうな河原がありました。
橋をくぐり抜け、ゆったりと流れる。。。
眼前に広がる雄大な風景につられ
パドルワークも徐々に大きくなってゆく。。。
そんな時だった。
「ん?」
前方の景色が、なんだかおかしい。。。
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ある部分(水面上の横一直線)を堺に
景色に微妙なズレが生じている。
水面は遠くから見ると大抵同じような色で変化に乏しいが
前方に見える水面は、そこに横一直線に線を引いたかのように
その境界線の上流と下流とでは、見え方が微かに異なっている。
「これはもしや?」と思い、その先の水音に神経を集中させる。
その音は非常に微量だった
だが、確かに「サーーーッ」という音を立てている。
”立て板に水”ということわざを連想させるような音だった。
その音が非常に小さかった為、その時は気付かなかったが
隊長は”大きな堰”の手前10m程のところにいた
「し、しまった。下見でチェックできてなかった。
(道路からは見えにくい場所にありました) 」 |
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慌てて後続に知らせる。
「せせ、せきやぁ〜!せきー!せきぃいいー!」
我々は予想もしていない堰の出現に慌てふためきながら
左岸へ上陸。
のりさん:「えらい落差のある堰やのぉ〜。。。
しっかし、音がほとんど聞こえんかったなぁ。」
モコさん:「ほんまやなぁ〜、流れが速かったら危なかったわね。」
隊長:「こんな所に、こんなデッカイ堰があったとは。。。
下見ですべてが見える訳じゃないから
情報の少ない川では五感を敏感にして
慎重に進まないといけないね。」 |
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のりさん:「せやな。この先、何があるか分からんっちゅう意味では
冒険的でおもろいやんけ! でも、たいちょー
オレ達はまだ”駆け出しのカヤッカー”なんやから
オマエがしっかりしてくれな困るやんけ!」
モコさん:「あなた、こんなヘナチョコ隊長をアテにしちゃダメよ。
これからはまず隊長を先に行かせ、
充分に距離をおいて進みましょうよ!」
橋さん:「えぇええー!?
隊長も隊長なら、隊員も隊員じゃないか!
オレ、こんな人達についてきてしもたけど大丈夫か?
とりあえず一番をうしろを漕いで行こうっと。。。」
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橋さんのライジャケは私と同じ物だった。
青色まで同じなんだけど、隊長のライジャケは使い古され
色がハゲており、ちょっと悔しい。。。
今度、途中で橋さんの舟と乗り代わり、皆を驚かせてやろう!
そして、橋さんをうはうは隊に引き入れて隊長の影武者にしよう。
そして、隊長に対する罵声はすべて
影武者である橋さんに受けてもらうのだ。
「大阪・堺支部隊員 橋さん
通称:影武者 別名:つーふー」でどうだ!(笑)
なだらかな山々を眺め
ゆっくり、ゆっくりと進む。
水の色は、まだ”抹茶ミルク色”だった。。。
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中央橋をくぐり抜けると、流れが左右に別れていた。
左ルートは、一見すると主流かと思うほどに水が流れ込んでいるが
どっこい、そこには”大伏の井堰”というテトラ堰があるのだ。
大水でテトラが流されたのか、非常に無造作に散らばっている。
しかもそこはゴツゴツした岩場になっておりファルト向きではない。
”クリーク達者なポリ艇”なら通行可能と思われる。
右ルートは、一見すると水が少なそうに見えますが
カヌーで漕行するに足る水量が
右岸べりを水路のように流れている。
ファルトや初心者はこちらのルートの方がよさそうであった。
これらは道路から見える場所にあるので下見するとよい。
我々は迷わず右側のルートを選んだ。
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緩やかな流れの中にも、いくつか気持ちの良い瀬があり
たまに現れるそれらを楽しみつつ下った。
畑瀬橋まで流れてきた。
橋の下(左岸側)には、芝生の平地がある。
雨をしのげる絶好の野宿ポイントなのだが
そこへ至るスロープにはチェーンが掛けられていた。
畑瀬橋のすぐ下流にある”津万井堰”を右岸からポーテージ。
ここは左岸の方がポーテージしやすいかもしれない。
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この後も、いくつかの小さな瀬を越えた。
僕らには丁度良いレベルの瀬で
なかなか充実した川下りとなった。
水量も増水していたせいか、ライニングダウンすることもなかった。
頃合いも良くゴール兼野宿地の錦度橋が見えてきた。
緯度橋の直下は、多くの岩が突き出ている。
ゆえに、早めに右岸へ寄り上陸した。
緯度橋の下流にも、”津万滝”という岩場の瀬があるので
ファルトの方は御注意下さい。
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ゴールした後、明日どうするのか話し合った。
我々のレベルだと
粟田橋から加古川大堰までの区間が下れそうだった。
しかし、この日3つの堰をポーテージした(越えた)我々は
もう満身創痍であった。。。
隊長とノリさんと橋さんは、互いに顔を見合わせ
暗黙の了解のうちに舟を畳み始めるのだった。。。
この日4人は、「堰を越えるカヌーツーリングはしんどい」
ということを学んだ。
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のりさん:「あひゃ〜!疲れた、疲れた! 温泉に行くべ!」
この日、野宿地でお留守番をしてくれていた
橋さんの奥さんと子供達。ありがとうございました。
川遊びができる暖かい季節に、また一緒に遊びましょうね。(^;^)
”へその湯”で温まった我々は、食材を買い込み野宿地へ戻った。
隊長は、皆より一足早く野宿地に着いた。
一人でランタンの準備をしていると、犬の散歩に来た人、
ウォーキングに来た人、自転車で川を眺めに来た人で賑わいだ。
この芝生広場は地域住民の憩いの場になっているようだ。
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犬の散歩に来た老夫婦に「キャンプ?へぇ〜、いいわねぇ〜。」
と話しかけられ、しばし立ち話。
それが終わると今度は、仕事帰りに自転車で立ち寄ったという
背広の老紳士に話しかけられ、また立ち話。
僕らが楽しんでいるツーリングカヌーと
それにまつわる出会いについて話すと
老紳士は「いいなぁ〜。」と目を輝かせて聞き入り、そのあと
自身のことについても、いろいろ話してくれるのであった。
こういう出会いというのは、いつも心が躍動し、楽しい。
たまには一人旅に出よう!
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橋さんの奥さんが”ハッシュドビーフ”を作ってくれました。
その美味しさに隊長はオカワリをしてしまいました。
のりさんも、今回は”全員分の米を一度に炊き上げる”という
離れワザをやってのけました。 えらいっ!
橋さんは、”ただ飲んでるだけ”でした。
あっ! 隊長も人のことは言えない。。。(汗)
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| 最初はドギマギしていたチビッコも、 |
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あっというまに仲間入り!
(おいおい、チビッコに何教えとんじゃ!)
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のりさん:「なんや花火かいな!? しゃーないなぁ、
おじさんが”ろうそく立て”を作ってやろう!」
橋さん:「うわ、よかったなぁ〜。 ほら、火つけよう!」
チビッコ:「ワキャキャキャ〜!(歓声)」
のりさん:「あつ! こらチビッコ、こっち向けたらアカンがな。」
おじさん焼いてどうすんねん!(^;^)」
リオちゃん:「プププッ! (焼き豚?) プププッ!(笑)」
こうして橋さん一家との楽しい宴は夜遅くまで続いたのでした。。。
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___________________エピローグ__________________ |
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翌朝。
舟を畳んでしまったのが悔やまれるほどの晴天。
久しぶりにマルタイラーメンの朝食。
温かい陽射しを浴びながら野宿地を撤収。 解散!
帰路に着こうとする隊長の背中に、のりさんが声を掛けた。
「たいちょー!
夏の余韻のあるうちに、もう一勝負してやってもエエぞ!」
カッティ〜ン!(怒) 臨むところだ!勝ち逃げは許さん!
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というわけで、小さな支流に直行!
車から漁獲セットを取り出し、各自準備を整える。
そう、”魚獲り合戦”が始まるのだ!
隊長:「よしっ、準備OK! 今日は負けんぞ!」
のりさん:「たいちょー、 今年はオレに負けっぱなしで
鼻息が荒くなるのは分かるが、
それではまだオレには勝てんぞ。。。」
隊長:「うるさい!はよ行くぞ!」
のりさん:「だからさぁ〜、このまま川に降りてっても
それではまだオレに勝てん!って言いよるがな。
。。。 あんなぁ、たいちょー。。。
戦う時はまず足下から固めなアカンっちゅうことや。
おまえ、自分の足下、よぉ〜に見てみぃ!」
隊長:「ん? 。。。。。ハッ! (恥)」
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モコさん:「ハッハッハッハ〜!
たいちょー、 右足はサンダルやけど、
左足はシューズ履いたままやんけ!
ボケるには早すぎるぞ。頼むぞ、おい!(^;^)」
いっそいで靴を履き替える隊長であった。。。
川にセルビンを浸け、網を手にガサガサ漁にでかける僕達。
清々しい小川で、魚獲りに夢中になった。。。
隊長は沢ガニを獲ったものの、
のりさんのドジョウには敵わなかった。
こうして、ぼくたちの夏は終わった。。。
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空は、どこまでも高く澄んでいなければならない。
←雲が龍神に見える。
のりさんには龍神がついているのであろう。
それで、いっつも雨に降られるのか、なるほどな。。。(笑)
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